③「ゲーミフィケーション」の建築技術者への活用検討

建築・設計ナレッジ

仕事が楽しいって思うことはあるだろうか?

頭を使って考えるのはめんどくさい…だけど、単純作業は飽きてしまう…

趣味やプライベートならやめればいいだけの話だが、仕事は違う。生きていくために半強制的に働かされる人が多いのではないか。どうせ働くなら楽しく働きたい。

仕事を楽しみ没頭できる…仕事の内容がそのままでも環境で変えられるのではないか…そんな思いから、楽しく仕事をするための工夫について検討してみる。

目的

建築技術者に対し、以下を達成するためにゲーミフィケーションの活用を検討する

【若手技術者のスキルアップ】

若手技術がスキルを身につけることのできる環境を構築する。

【モチベーションの向上】

やらされるのではなく、自主的に業務やスキルアップに取り組めるようにモチベーションが向上する環境を構築する。

【スキル・知識の見える化】

各々のスキル、資格、知識、経験等の見える化し、自身のステータスを把握することで、業務の難易度把握やモチベーション向上に繋げる。

背景・課題

近年では、改善されてきている(力を入れている)が、建設業界は長年、以下のような課題が見られる。

【技術継承】

技術や知識の低下も問題視され、技術継承が課題となっている。時間をかけて育成するよりも即戦力が必要とされてきている。

【労働環境や育成環境の未成熟】

労働環境や育成環境についても課題は多い。働く場所のフレキシブルさ、成長へのサポートが不足している。

【人材の高齢化】

社会全体的な問題もあるが、建設業界も高齢化は「設計者」「施工者」「審査者」各々で深刻だ。

整理手法

下記の内容で検討を行う。

【建設業界でのスキルや知識の整理 】

建設業界におけるスキルや知識のカテゴリについて整理する。

【ゲーミフィケーションの調査】

ゲーミフィケーションについて調査し、必要な要素を整理する。

【建設業界におけるゲーミフィケーションの活用】

建設業界にゲーミフィケーションを取り入れる方法について検討を行う。

整理結果

建設業界でのスキルや知識の整理

既に技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、技能・経験に応じた適切な処遇につなげていく仕組みとして、「建設キャリアアップシステム」がある。これらを参考にしつつ、ゲーミフィケーションの考え方との融合を目指す。

建設キャリアアップシステムにおけるレベル

建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベルは、建設業で働く技能者の経験や能力を可視化するために設けられた仕組みです。技能者はレベル1からレベル4までの段階に分類され、経験年数や保有資格、現場での役割に応じて認定されます。

【レベルの概要】

レベル1(初級技能者)

  建設業に従事し始めた技能者で、基礎的な作業を担当。登録のみで認定される。

レベル2(中堅技能者)

  一定の実務経験(概ね3年以上)を有し、基本的な資格を取得している技能者。標準的な作業を独力で遂行可能。

レベル3(熟練技能者)

  豊富な経験と高度な技能を持ち、現場での指導や管理補助ができる。必要な資格や評価基準を満たすことで認定。

レベル4(高度技能者・マイスター)

  現場の指導者・リーダーとして活躍でき、卓越した技能と実績を有する技能者。業界の模範的存在として評価される。

このレベル制度を活用することで、技能者のキャリア形成が明確になり、適切な処遇や現場配置にも役立つ仕組みになっています。

ゲーミフィケーションの調査

ゲーミフィケーションについて理解を深める。

ゲーミフィケーションとは?

ゲームの仕組み(目標、進捗、報酬、フィードバック、段階的難易度など)を、ゲーム以外の文脈(仕事・学習等)に応用して、参加者の動機付けや行動変容を促す手法。

ゲーミフィケーション協会より6要素が示されている。

各要素毎に建設業界への応用方針を定め、まとめを行う。

1.能動的な参加

ゲームは自分がやりたいときに始められ、やめたいときにやめられる。初級、中級、上級といった難易度が選択できるものも多い。 自分が最も楽しめるモードで取り組めるということが人間の活動には大きな意昧を持つ。また、ストーリーや世界観、キャラクターなどの魅力によリプレイヤーをゲームの世界に引き込むことで期待と興奮を設計し、継続的な参加を促す。

【応用の方針】

業務をクエスト制にすることで、自身の意思で参加可否を決めることができるようにする。また、業務の依頼内容を適切な難易度に振り分けることで、参加者の絞込みやミスマッチを減らすことができる。建設キャリアアップシステムのレベル等を参考に業務内容の難易度と参加者のランクをマッチさせる。

2.称賛を演出

ゲームではステージをクリアすると「GREAT」という表示とともに効果音が鳴ったリ花火が上がったリする。自分の成功がきちんと認められるということがやる気を生み出す。

【応用の方針】

業務の完了や資格の取得等の条件を明確化し、業務完了時にステータス更新等が可視化される。他の人のステータスの更新情報もリアルタイムで分かるようにし、ランキング等を表示する。

3.即時のフィードバック設計

ボタンを押すと主人公がジャンプするなど、ゲームでは操作に対する反応が画面からすぐに返ってくる。こうしたフィー ドバックが快感と安心をプレイヤーにもたらす。

【応用の方針】

空間内での作業が可視化される。また、完了したプロジェクトや選捗中の建物がゲーム世界内でBIMにより可視化される。クライアントとの合意形成に追加して、他の人の審査や評価(サポート)、インスピレーションノウハウの共有にも適している。また、業務の進捗もクエストの進捗のようにステータスとして確認できる状態にする。

4.独自性の歓迎

主人公に自分好みの装備を施すことは分かりやすい自己表現であリ独自性だが、その他にも、友達の気づかない攻略法を見つけ出したり、試行錯誤の末に自分なりの工夫をし目標をクリアすることもゲームの大きな魅力である。厳然たるルールが存在するがゆえの快感、満足感だ。

【応用の方針】

業務に関する説明がゲーム内で行われる。業務の効率化や知識をゲームの要素と考え、試行錯誤を促す。業務へ利用するソフトや道具も独自性の要素の一つとして考える。

5.成長の可視化

ゲームでは頑張った分だけレベルが上がり、自分の分身である主人公の見た目が変わるなどして成長が確かめられる。

【応用の方針】

ステータスや報酬で自己成長を可視化する。ステータスや報酬に応じて好きなソフトや講習、道具を買えるようにする。標準の装備はあるが、各人の好きなソフトや道具等で業務へのモチベーションをアップさせる。また、自身のランクも可視化されゲーム内でのランキング上昇や参加可能クエスト増加で成長を感じることができる。

6.達成可能な目標設定

RPG(ロールプレイングゲーム)では、最初に出現する敵は弱い。主人公の成長に合わせて敵も強くなっていくが、工夫と頑張りで必ず倒せるよう設定されている。頑張れば破れる壁であることが重要だ。

【応用の方針】

クエスト制にすることで、自身のレベルに合わせた難易度の業務を行うことができる。知識やソフト・道具等を利用して試行錯誤することで、業務の完了や品質・スピード等の壁を破れるようにする。

建設業界におけるゲーミフィケーションの活用

POINT① 業務をクエスト制に

従来の「上から与えられる仕事」を、ゲームのような“クエスト”として再設計する。

クエストは「意匠・構造・設備」といった役割ごとに分類され、それぞれに難易度が設定される。さらに、各クエストには参加可能なランクが定められており、自分のスキルや経験に応じて挑戦できる仕組みとする。

これにより、

・自分のレベルに合った業務を選べる

・無理な業務によるミスやストレスを防げる

・段階的に成長できる

といった効果が期待できる。

また、クエスト形式にすることで「仕事をこなす」から「クエストを攻略する」という感覚に変わり、主体的に業務へ参加する意識が生まれる。

POINT②活動拠点をVR世界へ

業務の進捗や成果を、BIMモデルやVR空間上で可視化する。

各プロジェクトは“ゲームのフィールド”のように扱われ、建物の完成度や作業状況がリアルタイムで反映される。誰がどの部分を担当しているのか、どこまで進んでいるのかが一目で分かる状態を目指す。

これにより、

・作業の進捗が直感的に理解できる

・チーム全体の動きが見える化される

・レビューやフィードバックが迅速になる

といったメリットがある。

さらに、完成した建物や進行中のプロジェクトを“体験”として共有できるため、単なる作業ではなく、成果への実感や達成感を強く得られる環境になる。

特にBIMモデルをベースに業務プロセスを進めていく検討については、②「アジャイル開発」の建設プロジェクトへの活用検討を参照

POINT③ステータスカードの発行

各技術者のスキルや経験を「ステータスカード」として可視化する。

このステータスは、建設キャリアアップシステム(CCUS)の考え方をベースにしつつ、クエスト達成数やスキルレベル、得意分野などを加えた拡張版とする。

具体的には、

・総合ランク(レベル)

・職種別スキル(意匠・構造・設備・作図・シュミレーション・届出等)

・資格や実務経験

・クエスト達成実績

といった情報を一元管理する。

これにより、

・自分の成長が明確に分かる

・どの業務に挑戦できるかが判断しやすい

・他者との違いや強みが可視化される

ようになる。

また、ステータスの更新やレベルアップがリアルタイムで反映されることで、達成感やモチベーションの向上にもつながる。

まとめ

ゲーミフィケーションの仕組みを建設業界に取り入れることで、若手技術者のスキルアップ促進や、モチベーションの向上、知識・スキルの可視化が期待できそうだ。

業務を「クエスト」に見立て、経験や資格を「ステータス」として可視化し、VR空間などを活用して即時のフィードバックを行うことで、働くことへの意欲と成長を促す環境を構築できるのではないだろうか。

ひとりごと

ゲーミフィケーションはどんなことにも応用できそうだと感じた。

成果や報酬がやりがいに繋がることは分かりやすいが、それ以外の部分も6要素に当てはまることで、新しい視点が取り入れられそうだ。

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